2010年09月11日

「小さな村の小さなダンサー」

今日は久しぶりに映画の感想。

シネスイッチ銀座に「小さな村の小さなダンサー」を観に行ってきました。

この映画館に前に行ったのは、確か「リトルダンサー」のときだったような。ずいぶん前だなあ。
窓口で券を出して席を取ろうとしたら、全席自由でびっくりした。ここのところ、ほぼシネコンでしか映画を観てないので、自由席ってなんだか新鮮。

こういう映画なので、お客さんの年齢層が高かったですね。文革が終わったころは中学生か高校生だったんじゃ?くらいな感じ。
ひとり、たぶんバレリーナっぽい小さい女の子がいたけど、バレエ映画に違いはありませんが、話わかったんだろうか…?

さて。

この映画、文革時代に肝煎りで作られた舞踊学院に、バレエとはまったく縁がない農村の少年が選ばれて行くことになり、様々な過程を経て才能あるダンサーに成長した彼が、アメリカに亡命し…という、実在のダンサーの自伝を元にした映画です。

つい最近原作を読んだばかりでしたが、映画はよく出来ていたと思います。この長い話をどうやって映像化したのかと興味津々でしたが、映画の出だしは少年が選ばれるところから始まります。アメリカに行った時点の彼と、舞踊学院での彼とを交互に写して、当時の中国の世相、そして初めて目の当たりにする資本主義社会への戸惑いと驚きを混ぜながら、物語が進んでいきます。

バレエ映画は多々あれど、バレエを始めた理由が政府からの命令、というところから始まる話というのは、そういう出来事があったのを知ったときには驚きましたね。江青ってそんなことまでしてたのか、という素朴なびっくりさ加減(笑)。まあでも、芸術作品で共産主義を讃えるというのは、他の国でもないこともなかったので、中国もやってたんだと。そんな感じです。

その時代にひとりの少年が翻弄され、しかもそれに負けずに成長していく姿というのは、胸を打たれます。原作ではベッドの下にこっそり隠された本でしたが、映画の中では尊敬する先生からこっそり渡されたビデオでバリシニコフのバレエを見て、僕もそうなりたいと願う少年の姿は、ただひたすらに真摯なものでした。

ってか、これは原作にもありますが、バリシニコフの影響力ってすごかったんだ、と改めて実感。映画の中の時代的に、バリシニコフは亡命したてで、一番油が乗ってた頃ですからね。私がバレエを観始めたころには、バリシニコフは年齢的にそういう時期を過ぎていたので、あまり深く考えたことがなかったんですよ。もちろん録画されたものを観たり、「愛と喝采の日々」も観ていますが。
でも重ねて言いますが、バリシニコフのバレエを初めて観た少年が、それに影響されてそうなりたいと頑張っていく気持ちは、痛いほど伝わってきました。

そして、アメリカで様々な出来事に影響され、亡命を決意する彼ですが…この感覚って、今の若い人にはわかるのかな?と映画を観ても原作を読んだときも思いました。ベルリンの壁が無くなりソ連が崩壊した後、スパイ小説が郷愁を誘うようにちょっとしたブームになったりしたことがありましたが…そういう過去の時代感覚を、こういう映画を観て実感してもらえればな、なんて考えたりもします。

亡命してから何年か過ぎ、おそらくソ連のペレストロイカに影響されて、共産国の締め付けが少々緩んだ時代、彼の両親がアメリカで行われる彼の舞台に招待され、そこで彼らは再会することになります。このシーンは泣けましたね…本読んだときも泣いたけど、映像にされるともうぼろぼろです。

最後は、妻を連れて故郷に戻ったかつての少年は、皆の前で妻とパ・ド・ドゥを踊ります。このラストシーン、すごく良かったな。幸せな、素敵なラストシーン、ラストのバレエでした。

お母さん役のジョアン・チェン、「ラストエンペラー」での皇帝の妻役で観ていますが、あれから十数年(もっとか?)のときが流れ、こういう役をやるようになったんだなあ…と何か感慨深かったです。

感慨深かったといえば、彼を亡命させる手続きを手伝う弁護士役のカイル・マクラクラン!FBIの捜査官が、渋い弁護士になりましたね、と(笑)。なんかちょっと…時を感じました…(嗚呼)。

主役のリー・ツンシンを演じた3人の俳優、子役の子以外のふたりは現役のバレエダンサーですが、それぞれ素晴らしい演技とバレエを披露してくれました。大人になったツンシンを演じたツァオ・チーはバーミンガム・ロイヤル・バレエ団のプリンシパルダンサーだとか。ヴァルナ金賞も取っているダンサーだそうで、彼が映画の中で踊ってくれるバレエは、一見の価値あり、です。

今さらアレですが、実は私、「リトルダンサー」という映画があまりピンと来なかったんですよね、当時。今だから言うけど、ラストがアダム・クーパーのあの「白鳥」ってのもなんだかね、と思ったので(笑)。

少年がダンサーになる成長物語としては、個人的にはこちらのほうが見応えがある映画だと思いました。ホント、個人的な感想です。

そういや、原作読んだときもちょっと疑問に思ったことがひとつ。
江青がもっと革命を賞賛するようなバレエを作れと言ったので、舞踊学院の教授陣が、中国独自の踊り方を作ろうとする側と、ワガノワ・メソッドを尊重する側と二手に分かれたシーンがありまして。
そもそもワガノワ・メソッドってのは同盟国(一応)であるソ連で培われたバレエの基本様式なわけですが、文革時代はそういうのもダメだったんですかね?原作を読んだときにも、その前時代にソ連に渡ってワガノワ・メソッドのバレエを習いダンサーとして中国に戻ってきた教師が、文革で迫害されるというところで引っかかったので…外国文化ってのは同盟国(一応)ですらも迫害の対象になってたんでしょうか?
今回、文革末期に育った少年の物語を観たわけですが、その少年を教えるダンサーたちの人生に興味が湧きました。日本じゃおそらく、なかなか知り様もない話だと思いますが…。
posted by Mikkey at 23:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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